最近、弦の値段がどんどん上がっていますね。
今年の夏に見た時も上がったなーと思っていたのに、9月、10月とさらに値段が上がっている感じです。
弦は消耗品なので、切れていなくても音質が下がっているので取り替えましょう、というのはまあそうなのですが、そのサイクルを一般常識?として演奏家は1ヶ月、趣味でも3ヶ月〜半年くらいで取り替えましょう。といろいろなところで書かれているのを見かけます。
私も大切なレコーディングやコンサートがある時は、その少し前に張り替えたりしますが、正直、その時のギャラに見合っているかな?と思うと、微妙なこともよくあることです。
そもそも弦って本当に高額です。
楽器屋さんが、初心者や趣味の人によくおすすめするドミナントっていう弦がありますが(多分、安く仕入れられるのだろうけれど、私はあの音が苦手なので使いません)、定価12,000円弱?お店で購入するときには7~8,000円くらいで販売されているようですが、演奏家が使うようなこだわり弦はもちろんもっともっと高額です。
コンクールや試験があれば、一生懸命練習した成果を最高のコンディションで出したいでしょうから、そういう環境のお子さんも親御さんがお金を用意できる環境ならば、1ヶ月に一度でも二度でも替えるでしょうね。
まぁ、音大教授のレッスンは弦代のことは気にしないような人しか受けられないほどに高額ですし、ヴァイオリンって、本体も高額で、弓の毛替えも弦と同じ頻度で替えることをおすすめされますから、日本で通常ルートでヴァイオリンの技術を習得して音大に行って、その後もおすすめ頻度で楽器のコンディションを保とうとしたら、とんでもないお金が必要ですよね。
でもちょっと待ってよ、と。
私の友人が、切れることなく取り替えたヴァイオリンの弦を途上国に送る活動をしていて、私も使用済み弦は捨てずに取っておいています。そういう、日本人が捨ててしまう弦をまだ使えるということで、喜んで使ってそれで熱心に練習している他国の子たちの話を聞くと、ヴァイオリンって、お金に余裕のある家の子どもたちだけのためのものなんかでは絶対にないのに、そこまでお金をかけないといけません、みたいな雰囲気っておかしいよなーって思ってしまうのです。
無理せず、自分の家庭環境の中でできるコンディションでヴァイオリンに向き合えばいいじゃないか、と思います。コンクール、音大、関わらないのなら、弦も弓もそんなに頻繁に替えなくて全然大丈夫。
昔、うん千万円もする楽器を弾かせてもらった時、高額なお金を出せれば、こんなに簡単に良い音が出せて、難しいと思っていたテクニックも楽にできるなら、そりゃぁクラシックの演奏はお金持ちに任せるしかないな‥‥。と思ったのですよ。だけどね、その素晴らしい楽器と常に良いコンディションはお金で叶うとしても、音楽に重要な感性は様々な体験、経験でしか育たないのだから、結局、楽器は二の次でも良いのではないでしょうか?っていうのが私の考えです。
よく、高額なオーディオ機器で音楽を聴いた時に感じることなのですが、良い音楽って、音質じゃないんですよね。クリアで立体的な音質で音楽を聴くことは現代では可能ですが、昔の蓄音機まではいかなくても、音がモゴモゴしたような音質劣化した再生機器で音楽を聴いた時でも、心に突き刺さる音楽や演奏ってありますよね?煌びやかな音も、すぐそばで鳴ると耳障りに感じることもありますし、その時の精神状態によって感じ方も変わりますし。
ヴァイオリンという楽器は、ものすごいポテンシャルを持っている楽器なのだから、学校のクラスで4〜5人くらいは弾ける子いるよ、くらいピアノ以上にもっと普及できるのでは?そのためには、今の弦の値段と取り替え頻度ではハードルが高すぎます。庶民感覚では、一年に一度、ピアノ調律程度以下のメンテナンス料、つまり、弓の毛替え代が5,000円ならば、弦は5,000円以下で1年間は交換しないサイクルでも、別に演奏家じゃなければ普通でしょう。というぐらいの世の中だったらいいですよね。
ただ、現時点でセットで5,000円以下で1年間持つと謳われている弦はもちろんありません。そんな弦の売り方をすれば商売になりませんしね。
お教室では分数楽器にはヴィジョンVisionを使うことが多いです。セットも5~6,000円で購入できて、途中で切れて交換するということもこれまでありませんでした。しっかりした音色です。だんだんと音は劣化してきますがこうりゃもう厳しいぞ、となるまでは大丈夫です。
もっと安い弦もありますが、張ったばかりの頃はいいのですが、その後、どこまで行ける?とちょっとヒヤヒヤしてしまいます。すぐに共鳴に引っかかるような感じがでたりして張り替えるくらいなら、ヴィジョンがいいかな、と思って今はそこに落ち着いています。ただ、いろいろな兼ね合い、見通しもありますからバージョンはいろいろです。ご参考に。